『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(Stranger Than Paradise/1984) 僕はキャリア・アスピレーション(出世)を目指している人の映画を撮ることにまったく興味がない。僕のどの映画にもテーマとしてあるのが、そうしたキャリア・ハッスル(出世主義)の外側にいる人たちなんだ。 出世しなきゃ、稼がなきゃ、いい暮らしをしなきゃ、モテなきゃ、といった思考に呪縛された「スクエア」な人たち(システム社会の奴隷とも言われる)とは対照的な連中が好む映画がある。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(STRANGER THAN PARADISE/1984)は、紛れもなくそんな1本だった。 1980年代後半、まだ10代の時に映画館へ行ったことがある。この映画の存在を教えてくれ一緒に誘ってくれたのは、「ヒップ」に生きる決意をしたばかりの友達だった。彼はその精神を忘れることなく、今ではスクエアな人た