10年以上前のことですが、住民票が必要になって、自宅近くにある区役所の出張所を訪ねました。窓口の担当は右腕のない青年で、わたしが身分証明書類を持ち合わせていなかったため、本人確認のため個人情報を訊ねなければならない非礼を詫び、手際よく事務を処理してくれました。 出張所のフロアには20人ほどの職員が働いていましたが、障がい者は彼1人でした。書類が出来上がるのを待ちながら、わたしはふと疑問に思いました。世の中にこれほど障がい者に適した職場がありながら、なぜその場所を健常者が独占しているのだろう? 市場経済では、利益をあげなければ会社はつぶれてしまうのですから、どれほど社会貢献に熱心でもいずれは「効率性」の壁にぶつかります。しかしわたしたちの社会には、利潤の最大化を目指さずに働ける職場があります。それが、国家や自治体の「公務」です。 だとしたら、国防や警察・消防など一定以上の身体能力を必要とする
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