Amazonが高級食料品スーパーのホールフーズをUS$13.7B(約1.5兆円)で買収するという発表がなされましたが、今日はその舞台裏を詳しく見てみたいと思います。 米国証券取引委員会(SEC)が先週金曜日に公開したM&Aの開示規則(委任状勧誘規制=14A)に詳しくでています。 なぜこんなに交渉の詳細を公開しているのかというと、ホールフーズは上場企業であり、今回の買収に関して臨時の株主総会を開いて株主の承認を得る必要があります。従って「なぜAmazonに対してこの値段で売却をすることが株主の利益につながるのか」と言うことを株主に説明する必要があるわけです。 その説明のための資料の一部に「Background of the Merger」(合併の背景)というセクションがあります。 ここでは買収に至るまでの経緯を詳しく述べるとともに、経営陣が行った交渉にコンプライアンス上の問題がないだけではな
Fintechの企業としてはかなり古株である、個人間決済のPayPalの2017年4月から6月期の決算が発表になりました。 *PayPal Q2-17 Investor Update(2017/7/26) 2017年4月ー6月の四半期の売上高はYoY+20%の$3.14B(約3,140億円)、Non-GAAP EPS(非米国会計基準の一株当たり利益)はYoY+27%の$0.46(約46円)、フリーキャッシュフローはYoY+51%の$0.7B(700億円)となりました。 GoogleやAmazon、Facebookも然りですが、PayPalもこれだけ大きな規模になっているにもかかわらず、非常に高い成長率を見せています。 取扱高がYoY+26%で成長。成長しているセグメントは?PayPalのビジネスは主に決済を扱うビジネスなので、最も重要なKPIを一つ挙げろと言われれば「取扱高」になります。
ネットフリックスに関してはこれまで何度か取り上げたことがありますが、興味深い会社なので今回も取り上げてみたいと思います。 今日のnoteは、「財務諸表を深く読む」という基本に立ち返り、数字とそこから読み取れる背景を分析します。 ちなみに、ネットフリックスはおそらくネット企業の中で最も決算を開示するのが早い会社で、だいたいいつも四半期の一番最初に出てくる決算発表がネットフリックスです。 想像でしかありませんが、社内の財務会計のシステムがとても整備されている会社なんだと思います。 2017年1月から3月期の決算を見てみたいと思います。 *Q1 17 Letter to shareholders(2017/4/17) 一番最初に注目すべきは動画ストリーミングの有料会員が9,436万人という規模に達しており、有料会員1億人の大台が目の前に迫っていることです。 売上は$2.6B(約2,600億円、Y
日本ではあまり報道されていませんが、アマゾンが、日用品EC関連のサイトを閉鎖する、というアナウンスをしました。 「Amazon to shut down Quidsi division for not being profitable」によれば Amazon is shutting down its Quidsi division, owner of Diapers.com and Soap.com, because it's not profitable, as Bloomberg first reported and the company confirmed to Axios. Amazon acquired the company for $545 million in 2011.とあるように、日用品関連で非常に大きなサイトであったDiapers.comとSoap.comの館を閉鎖
今日は異なるメディア間で1ユーザーあたりの広告売上を比較するという非常にチャレンジングな分析をしてみたいと思います。 背景としては、インターネットメディアで動画や動画広告が当たり前のような時代になってきました。2017年は「動画元年」と呼ばれるような年になるでしょう。これだけ動画が当たり前になってくると、当然広告の面でもテレビとの比較をしていく必要があると思い分析を始めました。 これまでは広告単価という点では、他のメディアにはない規模のユーザーにリーチできるテレビCMの優位性が揺るぎませんでした。インターネットメディアのユーザーあたりの広告売上というのはテレビのそれと比較してどの程度の水準に達しているのでしょうか? 2016年時点でのスナップショットを比較してみたいと思います。 日本テレビの放送売上*日本テレビ 2016年度第3四半期 IR決算説明資料(2017年2月7日) はじめに日テレ
ヤマト運輸が、主にアマゾンなどからの配送に対応できずに苦しんでいる、というニュースがありました。 既に色々な報道がなされていますが、少し数字の面で整理してみたいと思います。 「アマゾンはヤマト運輸の値上げを断れない --- 宮寺 達也」によると、以下の数字は抑えておく必要があるでしょう。 ■宅配便市場 ・日本の宅配便は年間37億個(2015年) ・ヤマト運輸が17億個、佐川急便が12億個 ■アマゾンの宅配便 ・アマゾンの宅配便は推定2.5億個(日本の宅配便の6.7%) ■宅配便の単価 ・個人向け宅配便は、平均的な段ボールサイズ(80cm)で関東-関西間が980円 ・アマゾンの宅配便は推計1個200円程度日本の宅配便全体の6.7%ものシェアを持つアマゾン に対して、定価の約1/5の値段でサービスを提供しているわけですから、当然苦しくなるに決まっています。 ヤマト運輸がアマゾンとの取引をした背
今日は世界最大のCtoCマーケットプレイスであるeBayの話を書いてみようと思います。 日本ではヤフーショッピングが新たな料金体系を導入して以来、ECの主役は楽天市場、ヤフーショッピングといったBtoBtoC型のマーケットプレイスになっているのが現状です。 他方アメリカでは、ECにおいてはAmazonの一人勝ちとも言えるような状況が続いています。 「Amazon captured more than half of all online sales growth last year, new data shows」との記事にあるように、EC全体の成長率うち半分以上をAmazonが獲得しているという状況で、Amazonより早く成長しているEC の大型プレイヤーを探すのは困難な状況です。 eBayの2006年10月から2016年10月から12月期の決算を見てみます。 ■eBay Q4 2016
今日のnoteは引き続きFinTechシリーズということでPayPalを取り上げたいと思います。 PayPalといえば昔からある個人間送金のサービスですが、スマホ対応だけではなくそれ以外の打ち手も非常に見事で、まさに隙がないと言える存在かと思います。 日本でも最近話題になっている個人間送金に近いサービスがいくつか出てきていますが、PayPalがどのようにして個人間送金ビジネスから始まり、お金を稼いでいるのかというのを少し明らかにしてみたいと思います。 はじめに2016年10月から12月期の決算を見てみます。 ■PayPal Q4-16 and Full Year 2016 Investor Update (2017年1月26日発表) 四半期での取扱高は$99B(約9.9兆円、YoY+25%)、売上が約$3B(約3,000億円、YoY+19%)と非常に好調でした。 アクティブなアカウント数が
「コワーキングスペースWeWorkの企業価値はなぜそんなに高いのか?バブル?」という記事がバズっており、「単なるシェアオフィスにしか見えないのに、なぜそんなに高評価なのか?」という質問をたくさん受けたので、詳しく読み解いてみます。 事の発端はソフトバンクが、WeWork社に$20B(約2兆円)の評価額で、$3B(約3,000億円)もの金額を投資するかもしれない、という記事が出たことです。 ■SoftBank set to invest more than $3 billion in WeWork(CNBC 2017年2月27日) WeWorkとは?「WeWork」と言われるシェアオフィスを提供する会社です。 2010年にニューヨークで創業され、ニューヨークやサンフランシスコといったアメリカの主要都市を始め、ロンドン、カナダ、オランダ、イスラエルなど世界中36都市でオフィスビルを丸ごと、ある
先日、クレジットカードビジネスの収益性のテイクレートに関する記事を書いたところ非常に好評で、他のFintechビジネスについても同様の記事が読みたい、という声を多数頂きました。そこで今日は、Fintechビジネスの重要な3つのモデルについて、収益性テイクレートを分析してみたいと思います。 具体的には、決済プラットフォームのPayPal、店舗決済端末のSquare、金貸しマーケットプレイスのLendingClubの3つを比較してみたいと思います。 テイクレートというのは、取扱高が100あった場合に、いくらの売上になるのか、を表す割合のことです。 それでは早速3つのビジネスを見てみましょう。 その1: 決済プラットフォームのPayPalの収益性(テイクレート)はじめにPayPalの2016年10月〜12月期の決算を見てみます。 取扱高は$99b(約9兆9,000億円、YoY+25%)、売上が約
楽天の2016年10月から12月期の決算資料の中に非常に興味深いスライドがありました。 楽天カードはクレジットカードのショッピング取扱高において業界ナンバーワンに近づいているという資料です。 この数字だけを見ると上位2社と比較して、楽天カードの対前年比での成長率が圧倒的に高く、近い将来カードショッピングにおける取扱高においてナンバーワンになるということが示唆されています。 そこで今日はクレジットカードのビジネスモデルについて考察してみたいと思います。 クレジットカード会社のビジネスモデルクレジットカード会社はどのようにして収益を上げているのでしょうか。 三菱UFJニコスの決算資料の中にわかりやすい資料があったので、まずはそれを見てみましょう。 ■三菱UFJニコス株式会社 有価証券報告書 2015年4月1日〜2016年3月31日 クレジットカード部門の事業としては、大きく分けてカードショッピ
3/15 12:28 訂正しました。 修正1 情けない漢字の間違いで「原価償却」となっていました。正しくは「減価償却」です。 修正2 減損テストのところで「通常、会計・監査法人等の第三者が行います。」となっていましたが、正しくは「会社側が減損テストを行い、監査法人が意見する。」です。 3/19 6:13 再度訂正しました 修正3 リクルートのM&A部分で、EBITDAと営業利益を混同している記述が見られたため、修正しました。 ここ数年間の間に、国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下IFRS)に会計基準を変える上場企業が増えてきました。 テレコムだと、KDDI、ソフトバンク、ネット企業でも、ヤフー、楽天、DeNA、クックパッド、セプテーニなどが既にIFRSを採用しています。 それ以外にもトヨタ自動車、ホンダ、コマツ、日立
今日のnoteは、最近立て続けに質問があった「のれん代」について少し詳しく書いてみたいと思います。 2016年10月〜12月期の決算においては、ネット企業のうち、楽天とDeNAの2社で、のれんの減損が発生しました。 楽天に関しては、動画サービスVikiの評価損として214億円が計上されています。 Vikiの買収金額は$200m(約200億円)と推定されていますので、今回の減損は買収金額のほぼ全額を、一括で減損した形になると考えられます。 Vikiは売上モデルを変更し、売上が増え始めているにも関わらず、一括での全額減損となっているため、コンサバティブに減損を行った可能性もあります。 DeNAは、MERYを運営する株式会社ペロリ、iemo株式会社、株式会社Find Travelの3社ののれん、合わせて39億円分の減損が発生しています。 DeNAは、キュレーションメディア全体で約50億円の買収と
ZOZOTOWNを提供する株式会社スタートトゥデイの2016年10月から12月期の決算が発表になりました。 ■株式会社スタートトゥデイ 平成29年3月期 第3四半期決算説明会資料 (2017年1月31日発表) 誰が見ても絶好調と言える決算内容です。 商品取扱高は前年同期比+38.3%の616億円。売上高が221億円、営業利益は前年同期比+83.8%の87億円と非常に高い成長率を見せています。 四半期ベースでの売上、取扱高を見ると明らかに成長のスピードが加速しているということがわかると思います。 今日のnoteではどういった要因で成長が加速しているのか、ということを少し推測してみたいと思います。 スタートトゥデイは2016年の11月1日から「ツケ払い」というサービスを始めました。 決算の質疑応答でその「ツケ払い」がどの程度、取扱高の増加に寄与したかという点は開示されていません。 ■平成29年
ヤフーの2016年第3四半期(10月から12月期)の決算が発表になりました。(2017年2月3日発表) 売上高は2,213億円で前年同期+12.7%、営業利益は517億円で前年同期+20%と順調に成長しています。 四半期で109億円もの販売促進投資を行い、それでありながら増収増益を続けているというのは非常にすごいことだと思います。 今日は複数あるヤフーのビジネスの中でもショッピング事業に焦点を当ててみたいと思います。 ショッピング事業は取扱高が1,407億円と過去最高となりました。この取扱高はヤフーが2013年に「eコマース革命」を発表して以来ずっと右肩上がりで増え続けています。 「eコマース革命」で出店料と売上ロイヤルティ(システム利用料)を無料にしたわけですが、出店者側にはこれらを無料化し、さらにユーザーへのポイント還元を通じて出店者とユーザーの両方を大量にかき集めるという作戦は今のと
米Snap社が米証券取引委員会(SEC)に新規株式公開(IPO)を申請していたS-1が、2017年2月2日に公になりました。 Snap社は、Snapchatというメッセージングアプリを提供しています。 Snapchatは主に動画を送るためのメッセージングアプリで、送った動画が一定時間後に消える、という特徴があります。 この「消える動画」という特徴を生かして、欧米の若者の間で流行しています。 例えば酔っ払った後にふざけて破廉恥な動画を送っても、その動画が後に残ることがないため、非常に安心して使える、といった用途です。 アメリカでは若者のFacebook離れがよく叫ばれますが、若者はInstagramやSnapchatのような、画像・動画を中心にしたコミュニケーションを、より好んでいます。 今回はSnapchatの上場時の申請書から、Snapchatの全貌を明らかにしたいと思います。 ”Sna
色々な大統領令を発令して、世間を騒がしているトランプ政権ですが、通信業界にも大きなインパクトがある人事が発令されています。 本件は、日本の通信業界、特にソフトバンクにも大きな影響があると思われますが、日本ではあまり報道されていないようなので、少し詳しく見たいと思います。 米国連邦通信委員会(FCC)のトップが変更へ今回のトランプ政権での人事発令は、米国連邦通信委員会(FCC)のトップを変更する、というものです。 アメリカでは政権が変わるたび、正確には政権与党が変わるたびに、FCCのトップが変更されるというのは珍しいことではありません。共和党政権になれば共和党の人がFCCのトップになり、民主党政権になれば民主党の人がFCCのトップになる、ということです。 FCCというのは、日本で言うところの総務省の中でも、通信放送に該当する規制を管轄する組織です。 FCCには5人のコミッショナーがいます。そ
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