6月に大学を卒業し、7月から銀行で働き始めた上海出身の女性(22)は、両親から「上海人以外の人との結婚は絶対にダメ」とクギを刺されている。両親がそう言うのは、もちろん上海出身だからということもある。しかし、それ以上に「地方出身の男性と結婚しても、生まれる子供が上海では普通に教育を受けられず、幸せになれない」と考えているためだ。 上海市など中国の都市部では、教育の機会均等や、医療保険、年金といった社会保障は、その都市の「戸籍」を持つ人のための行政サービスと位置づけられている。区域外から移り住んできた人は対象外だ。地方出身者が「上海戸籍」を取得するには、15年以上の上海居住歴や納税実績など、高いハードルがある。 国籍とは別に、都市部と農村部で大きく区分けされる出身地ごとの「戸籍」が生涯ついて回るのが、中国人の宿命といえる。両親が農村部の戸籍しかなければ、子供もその戸籍しか得られない。都市への人