きのうNHKの衛星放送で、久しぶりに映画「アマデウス」を見た。名作であることは確かだが、もとの戯曲(ピーター・シェファー)に比ると、あまりにもハリウッド的だ。これは同じ監督(ミロシュ・フォアマン)の「カッコーの巣の上で」も同じで、原作の狂気が平板なヒューマニズムになってしまっている。 私が戯曲『アマデウス』を最初に読んだのは、1980年にブロードウェイで初演されたころだったと思う。当時は、ヒルデスハイマーの『モーツァルト』など、彼の(卑猥な冗談の多い)書簡をもとにして従来の「無垢の天才」というイメージをくつがえす研究が出はじめていた。その演劇版として読んだのだが、単なる偶像破壊ではなく、「神と人間」をテーマにした傑作だ。映画より、こっちをおすすめする。 日本では、江守徹がモーツァルトを演じたが、まったくイメージに合わなかった。1984年の映画でも、トム・ハルスのモーツァルトはただのバカ