ふっ、と目が覚めてスマホに目をやると朝の5時だった。窓の外はまだ真っ暗で、もったりとしたぬくもりを宿す毛布に顔を埋めて画面をタップする。すると覚えのないメモ帳が開いており「正しい怒りを忘れない」という一文があるではないか。実におだやかでない文言である。 何かの神託や霊言ならかっこいいが、おそらく自分で音声入力したものだろう。私はたまに夢のなかで仕事をしているらしい。そのなかで忘れていた〆切を思い出し、がばりと起き出してはPCをひらいたり、スマホにアイデアを音声入力していたりすることがよくあるのだ。そして真夜中にPCの前で憮然としたり、意味をなさない言葉の羅列に頭をひねったりする。こうして文章になっているのは珍しい。 * * * 怒りの感情を表現する、ということを自分に禁じたのは7年ほど前である。とある事情でーーというより例によって例のごとく異性関係なのだがーーそうすることを選んだ。選ぶ
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