これまで4回に渡って「“国民総幸福量”(GNH)をベースに置いて経済や社会、それにかかわる政策を考える」というブータンの斬新なアイデアを取り上げてきた。今の世界を見ると、国民総生産(GNP)を国の経済の強さを計測する唯一の指標にする考え方が、あちこちで行き詰まりを呈(てい)していることは明確である。リーマン・ブラザーズの破綻以降の世界経済は、GNP的な発想からすれば一段とゆがみを大きくした。 経済や社会を考える上では、「生産の量ではない別の指標が欲しい」というのは、世界各国の今の潮流とも合致している。たとえば鳩山新政権は、「人に優しい」が政権の一つのスローガンだが、それは今までの自由民主党的なGNP重視にやや偏った政策へのアンチテーゼである。だからこそ、前回指摘したフランスのように、このGNHというアイデアを積極的に取り入れようとトライする国も出てきている。 「では、実際にはブータンとはど