起源となる「羊羹」は、もともとは中国大陸の料理の名前で、読んで字のごとく羊の羹(あつもの)[注釈 1]、つまりは羊の肉を煮たスープの類であった[6]。南北朝時代に北魏の捕虜になった毛脩之が「羊羹」を作ったところ太武帝が喜んだという記事が宋書に見えるが、これは本来の意味の羊のスープであったと思われる[7]。 鎌倉時代から室町時代に、禅僧によって日本に伝えられたが、禅宗では肉食が戒律(五戒)により禁じられているため、精進料理として羊肉の煮こごりの代わりに小豆や小麦粉、葛粉などを用いたものが、日本における羊羹の原型になったとされる。 日本の文献における「羊羹」の初出は室町時代前期(1300年代後半)に書かれた『庭訓往来』の「点心」の記事とされる。タケノコ入りと考えられる「箏(笋)羊羹」と、砂糖入りと考えられる「砂糖羊羹」の記載がある[8]。当時の羊羹は汁とともに食べるものであった[9]。1504