歴史を学ぶことによって、現代社会が抱える問題に「対案」は出せるのだろうか――? NHK「ニッポンのジレンマ~民主主義の限界?」に出演し、歴史研究の蓄積を実践の場へと導き出した、新世代の歴史学者・與那覇潤。危機の時代だからこそ有用な、未来志向の歴史の学びとは。「使える」歴史学を身につけるための心構えを説く。 過去には異世界もユートピアも存在しない Q,歴史研究者として、現代における歴史学の役割とはどんなことだと思われますか。 A,「歴史的に語ること」の強みは、「なぜ、いまこのような日本になっているのか」を、できるかぎり感情を排して説明できるところだと思うんです。 たとえば、「あるべき」もの(当為)を構想する哲学的、思想的な語りは、「このような社会を目指そう!」という積極的なビジョンを提示することに強い反面、「ではなぜそれが実現しないのか」という問い返しには弱いところがある。社会科学の言葉で「