2017.1.26 朝日新聞 他者思う大人(たいじん)はどこに 歴史社会学者・小熊英二 「私には仕事が必要だ。私の子供は大学に行く必要がある。トランプ氏はそれを約束してくれている。おそらく彼は、その人種差別的で性差別的な政策をやり通さないだろう」 米大統領選で注目されたサンダース上院議員は、有権者の真意をこう推定している〈1〉。実際に社会学者のマイク・デイヴィスによれば、トランプ投票者の2割は、トランプ個人に対しては否定的な態度をとっていたという〈2〉。 ここに見られるのは一種の悪循環だ。社会の分断が政治への不満を生み、政治を変革したいという願望が結果的に差別的な権威主義を呼び込み、さらに社会の分断を強化してしまう。ロベルト・ステファン・フォアとヤシャ・モンクは、先進諸国で「民主主義への支持」や政治への関心が低下し、権威主義への支持が増えていることを指摘している〈3〉。 日本ではどうだろう