概要孵化したばかりのケナガカブリダニ( 以下ダニ)の幼虫は同種や近縁種の雌成虫( 以下捕食者)によく捕食されます。捕食者はダニの卵も攻撃しますが、ほとんどの場合は歯が立たずに捕食を諦めます。卵がこの攻撃に気付いているなら、攻撃されている最中に孵化してむざむざ捕食されるよりも、孵化を先送りするべきです。 京都大学大学院農学研究科 矢野修一 助教と福勢かおる 農学部学部生( 現:埼玉県農業技術研究センター)は、体長が 0.5 ミリの捕食者がダニの卵を攻撃する動きを真似て筆先で卵に触れ続けると孵化が止まり、触れるのを止めると孵化が再開することを発見しました。この結果は、触られることで捕食者に狙われていることを知った卵が孵化を遅らせ、捕食者が去るのを待って孵化できることを示します。捕食リスクに応じて卵が孵化のタイミングを変える例は節足動物では初めてですが、同様の駆け引きは頑丈な卵を個別に産む陸上動