小津の代表作品『東京物語』(1953)を紹介します。小津の映画には外国の研究者の関心が深く、小津で日本の伝統を知った、日本を好きになったという人も多いのですが、これが日本だと思われたら非常に困るということもあります。日本的なるものとは単純に言えないからです。 小津の代表的な作品には、父と娘、父母と息子など、家族の関係を描いたホームドラマが多く、日本的な家族像と言われています。映像上で考えますと、小津の映画にはパンや移動撮影はなく、ワンシーンをすべてカットだけでつないでいます。非常に単調であり、映画に出てくる人間は植物みたいだとアメリカのある研究者は言っています。また、非常に静止的で、カメラで見える範囲が制限されているような視野の狭さを感じます。戸外は別として、カメラは必ず固定されたロー・アングルで、これは畳に座った位置だと言われます。このロー・アングルがしばしば畳文化とみなされ小津=伝統的