ぼくは当時にしては (今でも、だと思うけど) 珍しく、高校生で一人暮らしをしていた。高校三年生になるときに父親の転勤が決まって転校するかどうかという話になったのだけど、部活や受験もあったし、一人秋田に残ることに決めたというのが理由だった。当時ぼくが住んでいた・・・というより世話になっていたのは、いかにも田舎のお母さんが管理人をしている下宿だった。イメージ的にはめぞん一刻の一刻館に近い。だいたい下宿全体で10部屋くらい、玄関は共通で、下宿に入ったらスリッパ。各部屋は廊下を通じてつながっている。風呂やトイレ、洗面所、洗濯機は共同だった。少し大きめの食堂があって、6人がけのテーブルがあった。朝ご飯や晩ご飯は、基本的にそこで食べる。管理人のおばさんが、隣の自分の家から出張ってきて朝ご飯や夜ご飯を作ってくれるのだった。冷蔵庫もみんなで共有していて、各自分の名前を書いて飲み物やレトルト食品を保存してい