ぼくが『君の名は。』を試写で観たときの第一印象は、これは「セカイ系や美少女ゲームといった自らの作家的出自に自覚的に回帰している」と同時に、「それ以降の時代の変化にもうまく乗っている」作品だというものでした。どういうことか。 まず、『君の名は。』の物語構造や映像表現は、それ自体きわめて「(美少女)ゲーム的」だといえます。たとえば、それは映画の冒頭部分のシークエンスから如実に窺われる。最初にざっと要約すれば、『君の名は。』は、田舎に住む女子高校生・宮水三葉(上白石萌音)と都会に住む男子高校生・立花瀧(神木隆之介)が、時空を超えてかれらの夢のなかで起こる「身体の入れ替わり」からはじまる、いっぷう変わったジュブナイル・ラブストーリーです。時間的にも空間的にも遠く離れたふたりの主人公は、眠っているあいだにおたがいの身体が入れ替わってしまうことに次第に気づきはじめますが、目覚めるといつも、入れ替わって