昭和は過ぎ、平成も終わりゆくこの頃。かつて権勢を誇った“おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか――伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート! 【第22話】おっさんたちのクリスマス 街角からマライアキャリーが聞こえ始めた。こうなってくるといくらおっさんといえども妙に浮足立ってくるものだ。 並木にくくりつけられたイルミネーションの電球が窓ガラスに反射し、眩いばかりの光があたりを包み込む。幻想的な光はどこか優しく、どこか忙しない。それを眺めることは恋人たちの特権のように思えるかもしれないが、おっさんだって眺める権利くらいはある。うっとりする権利くらいあるのだ。 お