昨年の悪夢を払拭すべく、熊本・鎮西高の3番を背負うエースの舛本颯真(ますもと・そうま/3年)が決勝のコートに立つ。 フルセットの連戦続きで、右膝にはケガを負う。満身創痍という言葉ですら足りないぐらい身体は限界を超えていたが、何が何でも勝利をつかみ取る。その一心だった。 春高バレー決勝。駿台学園高(東京)から2セットを先取し、全国制覇まであと1セット。舛本が声を張り上げる。 「去年はここで負けているから、目の前の1本だけに集中していこう」 渾身の力でスパイクを放ち続けるだけでなく、ボールをつなぐべく駆け回る。1点、また1点と得点が加わり、3枚ブロックにもひるまず攻める舛本が決めるたび、会場から大きな拍手と抑えきれない歓声が沸き起こった。 第3セットも14対10とリードを広げ、いよいよ悲願達成の時が訪れるか――。 しかし、高まる期待を嘲笑するかのように、勝利の女神はまた、優しく微笑んではくれな