老人ホームにいるのに「もう帰る」と言って外に出ようとする老人の姿を見て、 我々もその一種なのではないかと思うと怖くなる。 彼らは老人ホームを出ても帰り道など分からないが、「帰る」という目的意識だけは強くてとにかく歩きだす。 そして道に迷って徘徊老人となる。 帰る場所などないというのに。 翻って我々はどうか? 生きる目的だのなんだのを探し回っている。 だが本当にそんなものはあるのか? もしかしたら、老人と同じで有りもしないものを探し回っているだけではないのか? 徘徊老人と異なるのは、保護してくれる人などいないということ。 もしかしたら、同じところをグルグル回っているだけかもしれないのだ。