「めぐみちゃん。お父さんです。しばらく会わないうちに白髪が増えました」 ソウルを訪れた横田滋さん(73)は北朝鮮向けのラジオ局でマイクに向かい、娘の名を呼んで語りかけた。きのうは金英男さんの母の崔桂月さん(78)と初めて会った。 中1だっためぐみさんが北朝鮮の工作員に拉致されて29年近い。翌年には、韓国の海岸から高校生だった英男さんも北朝鮮に連れて行かれた。 そんな境遇のふたりが共に暮らしていた可能性が大きい。めぐみさんの娘らのDNA鑑定でわかった。横田さんの訪韓はこの結果を受けたものだ。 白髪になった横田さん。顔に深いしわが刻まれた崔さん。連れ去られた子をともに思い、いたわり合う。そんな姿を見て、拉致という犯罪の非道さを改めて思わざるをえない。 韓国では「拉北者」という。戻ってきた人も少なくないが、まだ485人が残っている。英男さんのような典型的な拉致もあれば、北に乗っ取られた大韓航空機