D. A. ノーマンの『誰のためのデザイン?』(新曜社、1990年1月)という本を教えてもらったのだが、第6章の中の「タイプライター ― デザイン進化のケースヒストリー」(pp.236-244)がQWERTY配列に関するガセネタのオンパレードで、ものすごいシロモノだった。何点か、あげつらってみようと思う。 現在標準となっているキーボードはチャールズ・レイサム・ショールズ(Charles Latham Sholes)によって一八七〇年にデザインされたものである。このタイプのキーボードはクワーティ(qwerty)キーボードとよばれたり(アメリカで使われているものでは、上段の文字は左からqwertyの順になっているため)、ショールズ式キーボードと呼ばれたりしている。 1870年にQWERTY配列がデザインされていたなどという記録は、私の知る限り存在しない。しかも、QWERTY配列をデザインしたの