「会社に残ってもやることはないし,今辞めないと割増金は出ないよ」。今年50歳になるAさんは,会社からこう切り出された。 Aさんは通信機器などを主力とする大手メーカーに入社し,これまでの25年間を半導体技術者として,主に研究・開発部門で過ごしてきた。自ら企画したア イデアを基に社内ベンチャーを興して商品化するなど,与えられる仕事以上のことをしてきた自負はある。ただ,この半年間は会社からの締め付けが厳しく, 「経費は使うな,出張はおろか外出も控えろ」といった状態だった。いずれ大なたが振るわれることは覚悟していた。しかし,まさか自分が所属する事業所が閉 鎖されるとは思ってもみなかった。 ここでリセットだ 2009年4月に2度目の早期退職勧告が行われた時,Aさんは会社を辞めることを決断した。過去にヘッド・ハンティングの話はいくつかあったが,外に出るよりも会社を良い方向に持っていきたいと考えていた。