業界の注目を集める新鋭が正面から挑む、サイエンス×ミステリ! 『最後の鑑定人』岩井圭也 書評家・作家・専門家が新刊をご紹介! 本選びにお役立てください。 『最後の鑑定人』岩井圭也 評者:北上次郎 これは面白い。著者は金脈を掘り当てたのではないか。 本書『最後の鑑定人』の主人公は、土門誠。土門鑑定所の所長である。もっとも所員は土門誠のみ。あとは、秘書兼技官の高倉柊子だけ。土門鑑定所のウェブサイトには、次のように書かれている。 〈当鑑定所では、法科学の観点から適切な手法を用いて、中立的に科学鑑定を行います。情報科学、生物学、化学、心理学、人文科学等、多面的な観点からアプローチいたします。刑事・民事は問いません。料金は別途相談〉 たとえば最初に持ち込まれる依頼は、殺人事件の容疑者として逮捕された青年が現場近くの防犯カメラに映っていたとされる証拠映像の再解析だ。土門誠は鋭い分析から、容疑者の無実を