カナダで最初に「安楽死」への注目が集まったのは、1990年代だ。全身の筋肉が動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)を患ったスー・ロドリゲスさんが、医師の力を借りて自らの命を終わらせたいと願った。 だが、カナダの刑法が自殺幇助を禁じていたため、ロドリゲスさんはこの規定が憲法に違反するとして訴えを起こした。 1992年、ロドリゲスさんはカナダ国会に向けたビデオメッセージで「自分の死を承諾できないのであれば、誰がこの体を支配しているのか? 誰が私の命を所有しているのか?」と問いかけた。広く支持を集めたが、最高裁は1993年、彼女の訴えを退けた。自殺幇助を禁じる規定について、判事9人のうち5人が「合憲」、4人が「違憲」の立場だった。 ロドリゲスさんは94年、医師の助けを受けて亡くなった。医師が誰であったかは、今も明らかにされていない。 約20年後、難病患者が「死ぬ権利」を求める訴訟が再び