2015年12月26日 一般財団法人東京顕微鏡院 食と環境の科学センター 理化学検査部 技術専門係長 鈴木 昌宜 1. はじめに 炬燵を囲んでみかんを食べる風景は冬の風物詩の一つですが、そのみかんも日にちがたつとカビが生えてくるのを経験された方は多いことと思います。カビは糸状菌とも呼ばれ、真菌類に分類されますが、キノコ、酵母もその仲間です。カビの胞子は微細で肉眼では認識できませんが、環境中のいたるところに存在しています。それが食品などの適当な基質に付着し、水分、温度、湿度などの環境条件が整うと、それから出芽し、菌糸を伸ばして集落を作り、カビの発生が認識されることになります。 カビには私達の暮らしの中で、有効活用されているものが数多く存在します。その例として、Aspergillus oryzaeやAspergillus awamoriなどの麹カビを穀類に着生させた麹から味噌、醤油、日本酒、焼