<岩垂 弘(いわたれひろし):ジャーナリスト> 今年も「反核の夏」が近づいた。今夏も広島原爆の日の「8月6日」、長崎原爆の日の「8月9日」を中心に核兵器廃絶を目指す大会や集会、イベントが繰り広げられるだろう。そんな季節を前にして、私は一人の人間の問いかけを心の中で反芻している。3月20日に65歳で亡くなった占領史家の笹本征男(ささもと・まさお)さんが提起した問いかけである。その問いかけの根底にあったのは、原爆被害、とりわけ被爆直後の日本政府の対応への憤りであったとみていいだろう。 笹本さんは島根県益田市生まれ。益田高校を卒業すると東京に出、働き始めた。やがて、市民グループ「原爆文献を読む会」に参加し、そこで、フリーライターで原爆被爆問題に詳しい中島竜美さん(故人)に出会い、当時、援護の外に置かれていた在韓被爆者の存在を知り、その支援活動に加わる。 その一方で、働きながら中央大学法学部に通