2011年3月の東日本大震災、福島第1原発事故の壊滅的な大打撃に日本中が打ちのめされた2カ月後、国は総工費9兆円超のリニア中央新幹線整備計画を発表した。日本再生を図る国家的プロジェクトへの期待が大きく膨らんだ。 静岡県では最北部の南アルプス地下約10kmを通過することになったが、山梨、長野、岐阜などの大騒ぎに比べ、地元マスコミの扱いは小さく、ほとんどの県民には他人事だった。大井川源流部の南アルプスは、登山や渓流釣り以外にはなじみが薄く、あまりに遠く離れた“秘境”とも言える場所だからである。 静岡空港は閑古鳥 一方、年間160万~170万人の利用客を見込んで2009年6月に開港した静岡空港(富士山静岡空港)は、2010年の利用客が約59万人にとどまっていた。採算ラインの半分にしか達しない惨憺(さんたん)たる状況で、リーマンショック後の静岡県経済「停滞」の象徴となってしまった。リニアが東海道新