サービス産業が抱える困難の一つに、「在庫することができない」ということがある。つまり、顧客がいる時にしかサービスを提供することができず、いつ来るか分からない顧客のために、サービスを事前に作り置きすることができないということである。 このサービスの特徴をサービスの生産と消費の「同時性」と呼ぶ。この同時性は、企業にとって、いつ来るか分からない顧客のために従業員を待機させる必要があり、サービスの提供作業を平準化することが非常に難しいということを意味している。 一方、この同時性は、顧客にとっても大きな問題である。サービスの生産、つまりサービスが提供されたと同時に顧客はそのサービスを消費したことになるのだ。消費する時にしかサービスが提供されないことから、サービスの内容を事前に正確に把握することもできないのである。そして、提供されたサービスを消費した以上、顧客は受けたサービスの満足の程度に依らず、その