前々回の話題の続き。 『経済成長ってなんで必要なんだろう』における飯田泰之氏と湯浅誠氏の対立点は、私の考えでは「溜め」の具体的な内容に対する理解に求められる。飯田氏は湯浅氏の「溜め」の理解に全面的に賛同しつつ、それをベーシック・インカム(最低所得保障)によって回復させるべきだとという立場をとっている。 しかし根本的な問題は、ベーシック・インカムが本当に「溜め」につながるのか、ということにある。飯田氏の言う「負の所得税」という方法は、確かに論理としては明快である。しかし注意しなければいけないのは、湯浅氏の言う「溜め」というのは、仕事を紹介しくれる知人がいるとか、いざとなったら食事をおごってくれる先輩がいるとか、そして雇用保険や生活保護といった公的な社会保障制度とか、そういう「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」全般を含むものであることである。 ベーシック・インカムというのは、最低限の給付