イスラム世界に詳しい文芸評論家の著者が、三島由紀夫の「死に方」を軸に、その後の小説家たちがテロを描いてきたことの意味を探った。 著者は三島の影響を受けたというフランスの作家ウエルベックが20年以上も前に小説の中で、イスラム過激派の国際テロを予言していたことを紹介。1970年11月に三島が東京・市ケ谷の陸上自衛隊・総監室で割腹自決した事件をテロとみて、その内実を考察する。さらに村上春樹や桐野夏生、高村薫、町田康、村上龍らのテロに関連した小説を分析し、三島の『金閣寺』や『奔馬』などに分け入る。 終章の「生首考」では総監室の床に置かれた三島の生首とイスラム過激派がメディアに晒す生首の関係を問う。脱線が多いが、その縦横無尽さが本書のテーマの不気味さを緩和している。 ※週刊朝日 2016年5月27日号
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