父が4才の娘・ヌヌに牛乳の入ったコップの中に牛がいるという嘘をついた。それを信じた娘は、牛乳を飲み干したが、牛はいなかった。ヌヌは、父が常にさまざまな嘘をつくので次第に信頼しないようになる。作者自身の幼い頃の父との思い出に基づいて制作されたアニメーション作品。日常生活の中にあるあらゆる形態の「嘘」をすくいとって、子どもの視点から父の姿を描いている。柔らかいパステルの質感が印象的な多彩なドローイングが際立つ手描きアニメーションの技法を用いることで、80年代中国江南地方の小さな町の雰囲気が再現されている。 贈賞理由 雨の日のシーンが良い。父の漕ぐ自転車に乗って雨カッパの隙間から覗き見た人の生きざまの影の部分が、痛烈に物悲しい。去りゆく車のテールランプがにじんで見えるのは、雨のせいばかりではあるまい。不安にさらされる生活の中、父と娘のやり取りは、ほほえましくて救われるのだが、ほろ苦くもある。随所