北杜夫さんが亡くなった。 今年にはいってから、にわかに訃報が増えた気がしているのは、つまり、私がそういう年齢に立ち至ったということなのだと思う。五十代も半ばを過ぎると、前半生に影響をもたらした人々が次々と死期を迎える。今後は、親しく付き合いのあった人間の訃報が続き、最終的には自分が訃報の発行元になるはずだ。これから先の順番はまだわからない。エクセルで表を作っておくべきなのだろう。で、死んだ友人の欄には星のマークを書き込む。何人かとは、先に死んだ者がいくばくかの遺産を残す約束をしておくのが良いかもしれない。そうしておけば、互いの死を必要以上に悲しまずに済む。と、壁に貼った生存表が星で一杯になる頃、私はちょっとした資産家になっている。それが果たしてハッピーな結末であるのかどうかは、必ずしもはっきりしないが。 私が北杜夫(以下敬称略)の読者だったのは、主に中学生の頃だ。それ以前も以後も、あまり読