■スリー・ビルボード (監督:マーティン・マクドナー 2017年アメリカ映画) そこはミズーリ州の田舎町エビング。車も滅多に通らないうら寂びれた街道に立つ3つの看板に、ある日新しいメッセージ広告が掲示される。そこにある文言は「レイプされて殺された」「犯人逮捕はまだ?」「なぜ? ウィロビー署長」。広告を出したのは7ヶ月前娘をレイプされ焼殺された母親ミルドレッド。一向に進展しない捜査に業を煮やしての行動だった。そしてその日から、町を大きな波乱が蔽い始める。 映画『スリー・ビルボード』を観た。一人の母親が、娘を惨たらしい死に追いやったレイプ犯を一刻も早く逮捕して欲しい、という切羽詰まった願いをアピールしたにもかかわらず、事態があらぬ方向へとあらぬ方向へと崩れ出してゆく、というどこまでも寒々しい物語がここでは描かれる。嘆願された筈の警察はただ面目を保つことだけに腐心し、住民たちの一部は必死の思いの