生きるということ。そして死ぬということ。誰ひとりそこから逃れることはできない。私たちはこの世界にたった一人でやってきて、たった一人で去っていくのである。そのほとんどが寂しく、おびえて、人生の大半を無駄に送るのだ。 (ブコウスキー「狂った生き物」より) この映画の人生も例外ではないようだ。「ブルーバレンタイン」、口唇性愛をさせそうな男*1の子供を身ごもった女は、口唇性愛をしてくれる男と結ばれる。けれども結局、うまくは行かない。そんな映画である。 映画の冒頭、男は娘と一緒になって、テーブルに直接乗せたレーズンを手を使わずに食べて遊ぶ。女はそれを嫌がる。この些細なシーンに、女と男の間の、どうしようもない溝が描かれている。決定的…という程のものではなく、違和感をうむ程度の、である。この程度がこの映画の妙である。だから、ふたりは時間をかけて瓦解していく。たいしたプロットポイントも持たずに瓦解していく