夕食後にまったりしていると息子が「今度友達と献血行ってくるわ」と話し出した。 何事も経験することはいいことだと伝えると、どうやら何か心配なことがあるようだった。 「友達が「全部の血を抜くやつと、透析するやつがあって、どっちがいい?」って聞いてきたんだけど……」と言い、麦茶を一口啜ると意を決したかのように「俺、全部抜く方にしようと思う」と並々ならぬ決意を表明してくれた。 「そうか。うん。そうか」と笑いを噛み殺しながら息子の決意を噛み締める父親役を演じると、息子は少し照れて恥ずかしそうな顔で「1時間くらいかかるらしいんだよね」と続けた。 1時間で身体中の血を全て抜く……この子のボランティア精神は文字通り命がけだと感心した。 思い返せば18年前、ほかの赤ん坊よりも大きく生まれてきた息子がここまで何事もなく育ち、このコロナ禍で血液が不足している今の状況下で命を賭して全ての血を差し出すとは、胸にグッ
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