効果的利他主義者と呼ばれる人々の中には、誰もがその名を知っているような超大富豪の人々もいます。この人たちは、私などからすれば気が遠くなるような多額の資金を慈善活動に投じています。 すべての慈善活動が「よいこと」だとすれば、彼らの行為は素晴らしいことであり、彼らは立派だということになるでしょう。寄付を行うにしても、自分のなけなしのお金をポケットから捻出している庶民からすれば、何も言えなくなるような金額ですから。 ただ、これまた我々が想像もできないような大富豪の生活にかかるお金を支弁した上で、巨額の資金を慈善活動に拠出できること自体に疑問を感じる人はいないのでしょうか。 少なくともピーター・シンガーはこれに疑問を差し挟むことはありません。それどころか、彼らがこれほどまでの富を集めていることに対し、倫理的正当性の基盤を与える議論を展開しています。今日は、この点について詳細に見ていくことにします。
