5時49分、山陽線の始発、岡山行きの列車が動き出した。徐々に過ぎゆく見慣れた景色を眺めながら、これから始まる旅に思いをはせた。「いよいよ始まりますね」。先輩の松崎記者はまだ眠そうだ。 広島駅を出た列車はひたすら東へ、快調に進んでいく。思えば、広島に着任してちょうど2カ月。取材での移動は車がほとんどで、列車に乗るのは久しぶり。シートに座って、心地よい揺れに身を任せて外の景色を眺めているだけでも、まるで心が洗われるような気分。 思い返せば、6月半ばのある日の仕事帰り、先輩と寄った中華料理屋での会話からこの企画は動き出したのだった。まさか、こうして形になるなんて。 前日に切符を買った時からすでにテンションは上がっていたが、こうして実際に乗りながら見る車窓はまた格別。果たして無事に1日で一周出来るのか、乗り遅れたらどこかの駅で野宿かな……。そんな一抹の不安もあったものの、ひとたび列車に乗ってしまえ