子ども向けの教材、いわゆる「学参」を編集する業界にいたときには、「これ1冊でOK!」とか、「ズバリ!」とか、「基礎の基礎」とか、とにかく勉強になにか秘法があってそれさえ習得すればどんどん点数が伸びるような錯覚を抱かせるような表現をずいぶんと使ったものだ。現実にはそういった奥義のようなものは、ない。万人に通用するコツのようなものもなくて、ある人にとっては非常に有効な方法が、別の人にとっては理解を大きく阻害するものであったりする。典型的には、計算を分類して、それぞれのパターンごとに解法を徹底的に反復練習する方法だろう。これがハマる人からすれば「世の中の算数はまちがっている。こうやって身につければ絶対確実なのに!」と見えるらしいが、多くの人にとってそれはかえって煩雑で、混乱してしまう。語呂合わせとか各種の暗記法も、それが実際に得点力アップにつながる人とそうでない人がいる。人間のアタマの構造は思い