デンデラ [著]佐藤友哉[掲載]2009年9月13日[評者]阿刀田高(作家)■老婆たち獅子奮迅 闘いの果ては 冒頭に登場人物の一覧表がある。総勢50人。年齢が記されていて、70から100まで。これを見ただけで、 ――すごいぞ―― 尋常ではない内容を想像してしまう。 その通り、尋常ではない。深沢七郎の名作『楢山節考』の後日談と言えばわかりやすいだろうか。「お山」に捨てられた老婆たちが生き延びて村人の知らない山野に集落を作って生活しているのだ。その集落の名が「デンデラ」。これは『遠野物語』の中にあって、近々死ぬ人が歌などを歌って通り過ぎて行く野原で、幽明の境となる土地の謂(いい)らしい。 本書は、このように過去の伝承や文芸を引き継いでいるが、中身は相当にちがう。老婆たちは自分たちを捨てた村に対してさまざまな思惑を抱え、復讐(ふくしゅう)を企てる襲撃派と、それを拒否する穏健派に分かれて争いあい、