ブックマーク / note.kishidanami.com (6)

  • ディズニーランドの乗りものについていけなくなった日のこと|岸田奈美|NamiKishida

    半分以上は無料で読めます。キナリ★マガジン購読者さんは、おまけまで全文読めます。わが弟が、26歳の誕生日を迎えた。 毎朝、毎晩、覚えたてのLINEでカナリヤがさえずるごとく「デイズニーランド」と、弟が送ってくる。 小さな「ィ」の打ち方がわからないのを逆手にとり「ディズニーランドではないみたいね」と知らばっくれるのにも限界がありそうなので、しぶしぶお連れすることになった。 天日干しされたトドのように、昼間からベッドに横たわる母を誘った。二人で行くより、三人で行った方が、なにかと機動力が高まるのだ。 母いわく、夢に出るほどしつこく誘ったのだが、答えは 「姉弟だけで、仲良く行ってきい」 の一槍だった。 寒いのも、乗りものも、行列も嫌いな母にとって、ディズニーランドはトリプル役満である。 弟と千葉へ向かう途中で、ことあるごとに母へ 「まわりはみーんな、お母さんがおってうらやましいわ」 「心細くて

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    elogch 2021/12/08
  • 弟が大金を稼いだので、なにに使うかと思ったら|岸田奈美|NamiKishida

    岸田家の歴史を揺るがす大事件が起きた。 わが弟が、莫大なお金を稼いだのである。 大金とは、彼が三十年働いて手にするはずの金額だ。 それを数時間で。 田舎の片隅にある剥がれたフローリングの我が家から、絶世の富豪が爆誕した。血統書のない梅吉(犬)も、高貴なチャウチャウに見えてくる。 弟は生まれつきダウン症なので、障害のある人が集まる福祉作業所で、平日の朝から夕方まで働いており、日給は500円だけど昼が450円なので、手取りは50円だということは、一旦、横に置いておく。 富豪が爆誕したのだ。 (※賃金は弟の障害の程度、作業所が受注できる業務の量、通っている人数などの兼ね合いがあり、弟も働くというよりは、みんなで喋ったり、散歩したりすることをなによりの目的にして通ってるので、ゆるく受け入れてくださる福祉作業所のみなさまにとても感謝しています) さて、その気になる稼ぎ方であるが。 手書きカレンダー

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    elogch 2021/10/19
  • いなくなった、あの人のこと|岸田奈美|NamiKishida

    今年の3月ごろ、足を運ぶのにダントツで気が重い場所は、役所だった。 母が感染性心内膜炎というやばい病気で入院。 祖母の物忘れが急加速し、介護認定。 ダウン症の弟と祖母が一緒になるとトム&ジェリーからユーモアを抜いたような様相になることが増えたので、弟のグループホーム入居。 十年も精神病院で過ごしていた祖父が亡くなったので、相続。 わたしが東京から神戸へ出戻ることになったので、引っ越し。 一気に押し寄せてきたので、事あるごとにわたしは役所に行っていた。クエストを進行しに行ったはずが、なぜかいつもクエストを受注して帰ってきたような気がする。 書類を作るための書類に押す印鑑を証明するための書類を作るから、家に郵送する書類と他の書類を集めてもう一度来てね、みたいな。ドラクエの石板集めの方がまだ簡単。 でも、手続きが面倒というだけで、気が重かったわけじゃない。 手続きって、お金をもらうことでもあるか

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    elogch 2021/10/05
  • 「目を貸してください」と言われて|岸田奈美|NamiKishida

    このnoteは、SMBCグループと開催する「#一人じゃ気づけなかったこと」投稿コンテストの参考作品として、主催者から依頼をいただいて書きました。 もう八年も前のことである。 「キッシー、太った? 2キロくらい」 突然、勤め先の同僚から言われた。 なんとまあ、失礼な! 2キロってキッチリ当たってるから、なんとも言い返せん。くそう。っていうか、あんたの方が太ったやんか。 どついたろかと思ったが、それより驚愕したのは、彼の目は見えていないのである。外回りがあるのでいつものように誘導しようと、わたしが半歩前に立ち、左腕の肘あたりを彼に持ってもらったところだった。 何十回も、何百回も肘を貸していたのが、仇になった。この同僚は、わたしの腕を掴むだけで、ぷよぷよした脂肪の蓄えがわかるようになっていたのだ。 「なあ、合ってる? 合ってる?」 今度こそ、肘でどついてしまった。しかし彼は、素早く察して、ひらり

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    elogch 2021/09/22
  • 全財産を使って外車買ったら、えらいことになった|岸田奈美|NamiKishida

    12月19日 追記 こちらの記事が、とんでもねえ経緯と熱量で、英語ほか10言語に翻訳されました! 英語翻訳された奇跡の舞台裏note 英語翻訳版の記事 全財産の内訳は、大学生の時からベンチャー企業で10年間働いて、したたり落ちるスズメの涙を貯め込んだお金と。 こんなもん、もう一生書けへんわと思うくらいの熱量を打ち込んで書いたの印税だ。 それらが一瞬にして、なくなった。 外車を買ったからだ。 運転免許もないのに。 「調子乗ってんなよお前」と思った人も、「どうせ“わたしのマネをすれば秒速で車が買えるんですよ”ってやばいビジネスに誘うんだろ」と思った人も、一旦、聞いてほしい。 わたしは、わたしなりに、誇らしい使い方をしたのだ。 あまりにも誇らしいので、一連の流れを12月6日放送の「サンデーステーション(テレビ朝日)」で取材してもらうことになったけど、時間が限られているTVでは、わたしの当の思

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    elogch 2020/12/02
  • 24歳の弟は、字が書けない(はずだった、怪文書を読むまでは)|岸田奈美|NamiKishida

    わたしの弟・岸田良太には、生まれつき知的障害がある。ダウン症だ。(詳しくは「弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった」に書いた) 言葉がうまく伝わらない、発音もわかりづらい、みんなと同じことができない、いつもぼーっとしている。 でも、だめなところばかりじゃない。 玄関にを脱ぎ散らかし、母からいつも「あんたはムカデか」とお叱りを受けるわたしに比べ、よっぽど弟の方がきれい好きで、しっかりしてる。 難しい言葉はわからんが「ありがとう」「こんにちは」だけはハッキリ言えるので、すれ違う近所の人たちに挨拶と愛想を振りまきまくる弟は、愛されている。 先日もこのわたしを差し置き、内緒でからあげクンをオマケしてもらっていた。 わたしと弟で同じふるまいをしても、わたしは「アホ」で片づけられ、弟は「お調子者」と呼ばれる。後者がちょっと得をしている気がする。 かれこれ24年間、弟はずっとそんな感じで、楽しそ

    24歳の弟は、字が書けない(はずだった、怪文書を読むまでは)|岸田奈美|NamiKishida
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    elogch 2020/09/23
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