平城宮の衛府推定地から出土した檜扇。右が表で左が裏面。右端の1枚に「早令官得」と書かれている=奈良文化財研究所提供 平城宮跡(奈良市)にある官庁街の遺跡「東方官衙(かんが)」から出土した8世紀後半の檜扇(ひおうぎ)の一部に、「早く出世させて」と下級役人のものとみられるぼやきが書かれていた。奈良文化財研究所が発表した。 落書きがあったのは、ヒノキの薄板6枚が連なった扇の一部。1枚の長さは22〜23センチ、幅3センチ、厚さ1ミリほどで、その1枚に「早令官得(早く官を得さしめよ)」と墨書きされていた。 裏には「雲上行鴈負露飛(雲上を行く雁(かり)、露を負いて飛ぶ)」という漢詩も書かれていた。雲上では雁が見えないと考えたのか、「上」を消して横に「下」の字が書き加えてあった。 扇が見つかったのは、宮殿を警護する衛府(えふ)という役所のごみ廃棄穴と推定される場所。奈文研の渡辺晃宏・史料研究室長