クリスツラスさんが命を絶ったアテネ・国会前のシンタグマ広場の現場には多くの花が手向けられ、人々は足を止めて、追悼のメッセージに見入っていた=石田博士撮影 老人はなぜ死を選んだのか――。4月初めの朝、アテネのギリシャ国会前広場で、77歳の男性が自らの頭を銃で撃ち抜いた。残りの人生はそう長くないはずなのに。真相を知りたいと願う私に、男性の娘からメールが届いた。その文面には、国家破綻(はたん)の瀬戸際に立たされ、各国から落ちこぼれ扱いされるギリシャの国民の屈辱感があふれていた。 ■失政への不満、募った末 シンタグマ広場。1本の巨木の下に、多くの花束と小さなろうそくが並ぶ。その炎はいまも途切れることはない。 元薬剤師のディミトリス・クリスツラスさんが自ら命を絶った場所だ。木に貼られているのは、彼の死を悼むメッセージだけでない。「家畜であることを拒み、目を覚まそう」といった、国民に蜂起を呼びかけるも