G.K.チェスタートンのブラウン神父シリーズのある有名作品(1911年発表)に、「木を隠すなら森の中へ」云々という有名な言葉がある。正確には、次のようなセリフらしい(某サイトより引用)。「賢い人は葉をどこへ隠す? 森の中だ。森がない時は、自分で森を作る。一枚の枯れ葉を隠したいと願う者は、枯れ葉の林をこしらえあげるだろう。死体を隠したいと思う者は、死体の山をこしらえてそれを隠すだろう」 足尾銅山の経営者はまず、「銅山の廃棄物(捨石)を隠すには川の中へ」と考え、それを実行したわけだが、川に大洪水が起きると、そのためにかえって近隣の地域と住民に鉱毒の被害が拡大してしまった。では、鉱毒の被害を隠すためには? 荒畑寒村『谷中村滅亡史』を読むと、奇想天外なまでに大掛かりで、ポウの「盗まれた手紙」の大臣を思わせるほどに大胆不敵な犯行の手口(トリック)が、フィクションではなく、現実に組織的に実行されたと