<この国はどこへ行こうとしているのか> ◇今は海外の力、必要--緒方貞子さん(83) 「できることは何でもやりなさい」 国際協力機構(JICA)理事長、緒方貞子さんは東日本大震災の発生直後、職員にそう指示を出した。 福島県二本松市にあるJICAの施設で、原発事故の影響で家を追われた約400人を受け入れ、さらに東京都内の施設でも、透析患者にベッドを用意した。言うまでもなく本来のJICAの仕事は、開発途上国の援助だ。国内で支援活動をしたのは組織創立以来、初めてだった。 現場の求めているものを察し、素早く指示して行動する--。緒方さんが国連難民高等弁務官時代から持ち続けている信条だ。「JICAは海外での普段の活動がありますから、(震災対応という面でも)多少は慣れていたんですよ」。極めて控えめに語った。 会ったのは東京都千代田区の機構本部ビル理事長室。取材に訪れた午後、大粒の雨が路面をぬらしていた