佐々木正氏は1915年生まれの98歳。49歳の時に創業者・早川徳次氏に請われ、早川電機工業(現シャープ)に入社した。当時、同社は様々な“日本初の製品”を投入しながら、強大な販売網を持つ松下電器産業(現パナソニック)に市場を奪われていた最中。打開策を求める早川氏に佐々木氏は電卓事業への経営資源集中を提言、自ら開発部隊の先頭に立ち、発展の礎を築いた。 世界に先駆け電卓を開発するなど伝説の技術者でもある佐々木氏。70歳を過ぎてシャープを去ったが、氏が育てた液晶は同社の根幹技術へと成長した。だが、2000年代以降、薄型テレビ事業が飛躍し「液晶のシャープ」の名を世界に轟かせた同社が今、苦しい状況に陥っている。成長の立役者はシャープの現状をどう見るのか。 佐々木:液晶事業に関して言えば、自信過剰が事態を招きました。「液晶のシャープ」として世界に名が知れたため慢心してしまった。テレビをブラウン管からすべ