11月10日午前1時すぎ。イタリアからニュースが飛び込んできた。来年8月に始まる世界最大規模の建築展、第12回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展の総合ディレクターに妹島和世が決まったというのだ。日本人初、女性初。 1時半過ぎ、非常識な時間と思いつつ、コメント取材のために、彼女の設計事務所に電話してみた。 「はいはい」。妹島はごく普通に電話口に現れ、「建築の夢を示す場にしたい」と抱負を語ってくれた。事務所をひきあげるのは、毎晩午前2時から3時。まだ「通常の業務時間内」だったのだ。 睡眠時間は3、4時間で、休みもほとんどとらない。10月は4回、海外に出張した。自宅にはテレビもないし、趣味もない。楽しみは、コムデギャルソンを買うことぐらい。でも、悲壮感はみじんもない。いつもカジュアル。そこから、従来の建築観をくつがえす作品を生み出してきた。 国内で言えば、日本建築学会賞などを受けた金沢21世紀美術