今度はB級趣味に振り切れた……と思った。ソフィア・コッポラ監督『ブリング・リング』にサウンドトラックを提供したことやナイン・インチ・ネイル ズとのツアーがダニエル・ロパティンのスノビズムに火をつけまくり、これまで彼の作品を覆っていたアカデミズムから彼を引き剥がしたのかと。俗っ ぽさというものは誰にでもあるし、それを隠す人もいれば隠さない人もいる。彼にもそのような二面性があり、『ガーデン・オブ・ディリート』ではいままでとは違う側面を曝け出したのだと。 話を聞いてみると、しかし、必ずしもそういうことではなかった。アルバムのテーマを「不安とグロテスク」にしたことはそうだし、ナイン・インチ・ネイルズとのツアーが様々な面に多大な影響を及ぼしたことはたしかで、音楽面での影響から音楽産業のあり方にも、その認識は波及していた。彼自身、まだ自分の内面に何が起きたのか、そのすべてを語ることはできていないと思わ
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