最初に小学館新人コミック大賞に投稿された作品『眠りに就く時…』では、うねるような森の木々やベタを使っていない星空の作画から、執念や迫力が感じられるだろう。同賞の審査員を務めた業田良家(『自虐の詩』『機械仕掛けの愛』など)は、「切なくて涙が出るような絵」と評したという。 しかし、64歳という年齢は、“新人賞”を授賞するのに障壁とならなかったのだろうか。 「漫画は大衆娯楽ですから、一般的には、流行の絵柄や今の価値観が重要視されます。ハン先生の作風は、決して時流に沿っているとは言えませんが、独特の世界観が形成されています。世の中には思いどおりにならないことや不条理なことがたくさんあるけれど、それに対して飄々と向き合っていく感じがあります。声高に戦うのではなく、しょうがないよね、と。そういったところは、年齢を重ね、世の中の酸いも甘いもかみ分けた人生のベテランならでは、ですよね。そこが、むしろ新鮮に