湖の奥。紅色の館の、その地下。 五百の齢を重ねる吸血鬼が統べる、紅魔館の深い深い奥。 広くも狭くもない部屋に、フランドール・スカーレットはいた。 部屋は広い。その広さは、面積の問題ではなく、物がないせいで広く感じるというだけだった。 部屋には物がない。 紅色のカーペットが、隅から隅まで敷き詰められた部屋。 壁の色も紅く、足元も紅く、天井までもが紅い。部屋に窓がないせいで、一面の紅だった。 唯一存在するドアの色も紅。 そして、それ以外には、本当に何も存在しない。 普通ならばあるはずのものが一切合財部屋にはない。 眠るためのベッドも、部屋を照らすための電灯も、時間を潰すための本も、何かを書くための机も。 おおよそ部屋に必要だと思えるものは何もなかった。 紅く、何もない部屋。 閑散とした部屋、遊び道具など何もない部屋。 それでも、フランは楽しそうに笑っていた。部屋の中央にぺたんと女の子座りをして
「で、その手紙には何て書いてあるの?」 レミリアが手紙を持った咲夜に尋ねる 咲夜が手紙の文章を読み上げる 『そちらの妹君は、我々永遠亭が預かった。返して欲しくば、製作中のロケットを中止せよ。こちらの本懐を遂げられることを期待する なお妹君を預かった証拠としてこの箱を一緒に送る。返事はこちらが指定した場所に持ってくること』 その後の文章に返事の方法についてのこと細かな内容が記載されていた どうやら直接会わずに手紙のやりとりで連絡を取り合いたいらしい それを聞いたレミリアはこめかみに青筋を浮かべる 「あいつらが?そういえば月と何か関わりがあるみたいなこと言ってたわね。フランをさらうなんて、命知らずもいいところね・・・・」 「外に出してやるって言われたらホイホイ付いていきそうね、教育不足よレミィ?」 ロケット製作を一任されているパチュリーが言う 彼女もレミリアも中止にする気などさらさら無い
紅魔館のメイド長十六夜咲夜は、地下室に幽閉されている主人の妹フランドール・スカーレットに食事を運んでいた 本来この役目は他のメイドが行うはずなのだが、最近は皆が怖がってやりたくないと拒否したため、やむをえず咲夜がやっている 「失礼します・・・・」 そう言って地下室の扉を開ける 「咲夜?」 地下室はいつも通りフランドールがいた 「お食事をお持ちしました、ここに置いておきますね」 「ここってどこ?わからないんだけど?」 咲夜は怪訝な顔をした。食事のトレイはフランドールの目の前に置いてある フランドールはそれに気付かず、周りをキョロキョロ見回す 「妹様の目の前ですが?」 「そうなの?よく『こんな暗いのに』ここまで持って来られたね」 咲夜は不思議に思った (暗い?地下室はいつも通りの明るさのはずだけれど・・・・・) 最初この子は自分をからかっているのかと思った だがフランドールはいたって真面目な顔
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