水梳透(みなすきとおる)が穴に落ちたのは突然のことだった。 仕事でくたびれた体を引きずるように夜道を歩いていた透は、突如浮遊感を覚えた。 疲れが溜まって腰が砕けたのかと思った。慌てて足を踏ん張るも地面がない。 「えっ? な――ッ!?」 足がぴんと突っ張った。横隔膜を押し上げる浮遊感が持続する。 そこから10秒経って、ようやく透は異変に気がついた。 瞼を開いているのに、辺りは真っ暗だった。相変わらず浮遊感は続いている。 落ちた。 透がそのことに気がつくとほぼ同時に、視界を真っ白な光が満たした。 ぽん、という冗談のような音とともに透は腰から地面にぶつかった。 落下時間の割に、衝撃はまったくなかった。 「えっ、えぇえ……?」 状況が飲み込めない透は、しばし尻餅をついた形で辺りを見回した。 辺り一面、何もない。 ビルも家も道路も電柱もない。 すべてが白一色の空間が広がっていた。 「な、なんだここは
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