「うみねこのなく頃に」という作品は、一見推理ゲームのように見えるが、その条件を完全に満たしているとはいえない。推理ゲームにおいては、与えられた手掛かりから得られる最もありそうな唯一の解を選び出すことが前提とされるが、当作品において与えられる情報は非常に少なく、解の発散――複数の解が同時に存在しうる状態を呼び起こしている。これは推理ゲームとしての欠陥なのか、それとも必然なのかを問うことは「うみねこのなく頃に」(以下うみねこと略)という作品を解釈する際、大きな意義を持つだろう。 まず、推理ゲームにおける推理というものが、実際には上記のごとき論理実証主義的なものではなく、テクストと読者のある種の共感性によって成立するものだということを指摘しておきたい。厳密に解が収斂するほど証拠を積み重ねた作品はさほど多くなく、多くはテクストが提示する断片的な証拠から推定されるいくつかの解のうち、よりもっともらし