蓮實重彥さんの連載時評「些事にこだわり」第15回を「ちくま」9月号より転載します。延々とつづく渋谷駅周辺の再開発。東横線の地下化はじめ誰も便利になったとは思っていないはずの一連の大工事は都市再開発法によると「公共の福祉に寄与することを目的とする」そうなのだが、本当に? との疑問についてお話しさせていただきます。 避けようもない暑い日ざしを顔一面に受けとめながら、タワーレコードの渋谷店で購入した海外の雑誌を手にしてスクランブル交差点にさしかかると、すんでの所で信号が赤となってしまう。階段を降りて地下の通路に向かう方法もあるにはあったが、年齢故の足元のおぼつかなさから灼熱の地上に立ったまま青信号を待つことにしていると、いきなり、かたわらから、女性の声がフランス語で響いてくる。ふと視線を向けると、「そう、シブーヤは素晴らしい」と「ウ」の部分をアクセントで強調しながら、スマホを顎のあたりにあてた外
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小島秀夫監督は、映画への愛を公言してきた人物である。「METAL GEAR SOLID」や『DEATH STRANDING』などのクリエイターとして知られる彼は、ゲーム開発者になる前は映画制作を志しており、自身のゲームでもたびたびお気に入りの映画にオマージュを捧げてきた。「メタルギア」シリーズの主人公スネークも、『ニューヨーク1997』の主人公であるスネーク・プリスケンにちなんで命名された。小島が自身の作品に映画的な感性を込めてきたことは周知の事実で、著名な俳優を好んでゲームの声優に起用している。監督は、ただ映画が大好きなのだ。 映画ソフトの企画・制作で有名なクライテリオン社が、自社のYouTubeチャンネルで展開する「Closet Picks」シリーズに小島を招待した。この動画シリーズはクリエイティブ業界の著名人にスポットライトを当て、選ばれた人物が、クライテリオン・コレクションのディス
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